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Business Strategy and Outlook¶
東京エレクトロンは半導体製造装置メーカーで、業績を左右する外部要因として「半導体/FPD市況」を挙げている1。
2026年3月期の連結実績は、売上高2兆4,435億円、営業利益6,249億円、親会社株主に帰属する当期純利益5,745億円だった。半期別では、上期が売上高1兆1,797億円・営業利益3,032億円、下期が売上高1兆2,639億円・営業利益3,218億円で、営業利益率は上期25.7%、下期25.5%とほぼ同水準を保った1。
2026年7月30日に公表した2027年3月期の予想は、第2四半期(上期)で売上高1兆6,200億円、営業利益4,580億円、純利益3,490億円である。前年同期比で売上高は37.3%増、営業利益は51.1%増となり、営業利益率は28.3%へ上がる見通しだ1。同社はこの期から業績予想の開示を通期から半期分に変更しており、通期の数字は示していない1。第1四半期決算の発表時には、上期の連結業績予想と中間配当予想を修正している2。
足元の事業展開では、2026年7月にNVIDIA社との協業拡大(エージェント型AIとロボティクスの強化)を発表した2。米国子会社2社(Tokyo Electron America, Inc. と TEL Technology Center, America, LLC)の合併、スポンサー付きADR(米国預託証券)プログラムの設立も公表している2。次の決算(2027年3月期第2四半期)は2026年10月30日、第3四半期は2027年2月5日に発表する予定である3。
Bulls Say¶
- 世界の装置市場が拡大している。 2026年第2四半期(暦年)の世界の半導体製造装置販売額は405億ドルで、前年同期比23%増、前四半期比11%増だった。SEAJは、AI向けの先端ロジックとHBM・DRAMが市場を牽引し、高水準の設備投資が続いていると分析している5。地域別の前年同期比では、韓国が54%増、台湾が24%増と伸びた5。
- 日本製装置の出荷が加速している。 日本製半導体製造装置の2026年8月度の販売高(3カ月移動平均)は5,979億円で、前年同月比47.4%増だった。前年比の伸びは3月の11.1%から毎月拡大している6。
- メモリー大手が増産投資を進めている。 SK hynixは2026年第2四半期に売上高79.3兆ウォン、営業利益60.5兆ウォン(営業利益率76%)と四半期の過去最高を更新した。顧客需要が供給能力を上回る状況の中で、M15Xの量産前倒しや、2027年初めの龍仁(Yongin)第1期クリーンルーム稼働後の生産能力の急速な拡大に投資するとしている8。同社は第1四半期の時点で、2026年の投資規模を前年から大幅に増やす方針も示していた9。装置メーカーにとって、こうした投資は受注の裏付けになる。
- 会社予想が増益の加速を示している。 2027年3月期上期の営業利益予想は、前年同期比51.1%増の4,580億円、直前の2026年3月期下期比でも42%増である1。
Bears Say¶
- 最大市場の中国の伸びが鈍い。 中国は2023年第2四半期から13四半期連続で世界最大の装置市場だが、2026年第2四半期の前年同期比は5%増にとどまり、全体(23%増)を大きく下回った5。中国向けの比重が高い装置メーカーにとっては、成長の源泉が韓国・台湾に偏っていることを意味する。
- メモリー投資は価格次第で変わりやすい。 SK hynixの記録的な利益はDRAMとNAND価格の大幅上昇に支えられており8、同社自身も生産能力の増強と並行して「設備投資の規律(CapEx Discipline)」を守ると明言している。中長期の投資計画は、顧客の需要と投資効率を見ながら段階的に実行するとしている8。メモリー価格が反転すれば、装置の発注が先送りされるおそれがある。
- 地域・製品による濃淡がある。 2026年第2四半期の日本向け装置販売額は前年同期比9%減だった5。日本製FPD製造装置の8月度販売高は前年同月比20.9%減と、2026年4月以降は前年割れが続いている7。
- 通期の見通しが見えにくい。 業績予想を半期分の開示に変えたため、下期以降の会社の見通しは外部から確かめられない1。
Fair Value Estimate¶
妥当株価を考える前提は、利益水準をどこに置くかである。2026年3月期の営業利益は6,249億円だった。2027年3月期は上期だけで営業利益4,580億円を見込んでいるが、通期予想は開示されていない1。下期の見方によって正常化した利益水準の置き方が大きく変わるため、装置市場のサイクル(世界販売額が前年同期比23%増という拡大局面にあること5)をどこまで織り込むかが評価の中心になる。
純利益の扱いにも注意が要る。2026年3月期下期は、純利益(3,328億円)が営業利益(3,218億円)を上回った。これに対し2027年3月期上期の予想では、純利益(3,490億円)は営業利益(4,580億円)の76%にとどまる1。2026年3月期の純利益をそのまま倍率評価の基礎に使うと、経常的な収益力を過大に見積もるおそれがある。
参考として、同社は2026年8月に自己株式を1株あたり平均約5万4,600円(取得総額294億円÷取得株式数53万9,200株)で取得した4。2026年8月末の発行済株式総数4億6,803万株から自己株式1,415万株を除いた株数でこれを掛けると、時価総額は約24.8兆円になる4。これは2026年3月期の純利益の約43倍に相当する。この水準が妥当かどうかは、上期予想の増益が下期以降も続くかにかかっている。
Economic Moat¶
現時点では判断材料が不足している。競争優位の有無と源泉を評価するには、製品分野ごとの市場シェア、顧客構成、装置の据え付け台数(インストールベース)とサービス収益の比率、研究開発投資といった事実が必要だが、今回参照できた材料にはそれらが含まれていない。2026年3月期の営業利益率は25%を超えている1が、それだけでは価格決定力が一時的な好況によるものか、構造的な優位によるものかを区別できない。
Capital Allocation¶
同社は株主還元として自己株式の取得を機動的に使っている。2026年5月29日の取締役会で、取得期間を2026年6月1日〜2027年3月31日、上限を750万株・1,500億円とする取得を決議した。2026年8月末までに累計244万3,900株を1,499億9,901万円で取得し、金額ベースでは上限に達した(株数ベースの進捗は32.59%)4。同社は8月3日に取得の終了を公表している2。1,500億円の取得額は、2026年3月期の純利益(5,745億円1)の約26%にあたる。
一方、同じ8月には、ストックオプションの権利行使に対して自己株式12万3,300株を処分している。8月末の保有自己株式は1,415万株で、発行済株式総数の約3.0%である4。国内外のグループ役職員向けの株式交付制度の継続も決めており2、株式報酬による希薄化を自社株買いが一部打ち消す形になっている。
配当については、第1四半期決算の発表時に中間配当予想を修正した2が、修正後の金額や配当性向の方針は今回の材料からは確認できない。設備投資とM&Aの規模・方針も同様に確認できないため、資金配分全体の評価は自社株買いの実績に基づく部分評価にとどまる。
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IRカレンダー(東京エレクトロン株式会社) ↩
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自己株券買付状況報告書(法24条の6第1項に基づくもの、報告期間2026年8月1日〜8月31日、2026年9月11日提出、EDINET docID: S100Z1HI) ↩↩↩↩
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日本半導体製造装置協会「世界半導体製造装置統計(WorldWide SEMS Report)2026年第2四半期」(2026年9月4日) ↩↩↩↩↩
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日本半導体製造装置協会「日本製半導体製造装置 2026年8月度販売高(速報値)」(2026年9月18日) ↩
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日本半導体製造装置協会「日本製FPD製造装置 2026年8月度販売高(速報値)」(2026年9月18日) ↩
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SK hynix, "SK hynix Announces 1Q26 Financial Results" ↩